2017年10月11日

老いを感じる時

 高齢者の気持ちを察することは、他の年代とは違って特有の難しさがあるように思われます。高齢期以外の年代はその時期を当事者として体験した後に、その時期を振り返って客観的に見つめ直すことが出来ますが、高齢期だけは主観的に体験した後に客観的に見つめ直すという視点がありません。
国立長寿医療研究センターで下方浩史氏らが行っている高齢者を対象とした縦断研究において、「老いの自覚」をどんなときに感じるかという調査結果を『「老ける人」「老けない人」はここが違う』という著書で次ように報告されています。
『私達の行っている縦断研究において、「老いの自覚」をどんなときに感じるかを聞いてみたところ、「身体的な変化」よりも「人間関係の変化」を挙げた人のほうが多かったのです。「縦断研究」では、「老いの自覚」について、心理面の面接調査のなかで次のような質問をしています。
「最近6ヶ月の間で、老いを自覚したことはありますか?」
これに「はい」と答えた人には、
「老いを自覚した最大の理由はなんですか?」と質問します。
理由については、病気/身体・容姿の変化/体力の低下/人間関係の変化/心理的兆候(記憶力が悪くなった、など)/その他、などの選択肢があり、その中から選んでもらうようにしました。
すると、いちばん回答数が多かったのが、「人間関係の変化」だった、という訳です。具体例でいうと、一つは職場を引退したり、家族や友人の死に直面したり、といった、人との別れにつながる人間関係の変化を挙げた人が多くいました。離別とういのはいかにも寂しく、老いを考えるきっかけになっても不思議ではありません。
その一方で、孫の誕生や、長寿を祝うための家族の集まりといった、一見喜ばしいようなことも、老いを自覚させる出来事になり得るようなのです。還暦や古希、喜寿といった長寿の祝いも、「ご苦労様、これからはゆっくり休んでください」という意味が込められています。こうした出来事は、周囲が自分を老人と見ていることははっきりと自覚させられる瞬間です。自分の意識に関らず、周りから「あなたはもう高齢ですよ」というレッテルを貼られてしまうようなものです。
このように周りから押しつけられる形で老いを自覚させられると、自ら自覚するよりも大きなショックを受けるのでしょう。(鏡や写真に写った自分の姿にふと驚き自覚的ショックを受けることもあると思うが。)
なかでもいちばんこたえるのが、「わが子と立場が逆転してしまうとき」のようです。今までずっと立場が下だったはずの子どもから、ある日急に「もう歳なんだから」といたわられたり、慰められたり、馬鹿にされたり、といった体験です。確かにいかにも腹立たしく、情けない体験に違いありません。ショックが強いだけに、老いを自覚する瞬間として印象に残りやすいのだと思います。』

 この親子の立場が逆転する時期をどう乗り越えていくのかは、各々家族に与えられた課題なのでしょう。家族と同居している事で逆に孤立感が深まる場面があることは想像に難くないと思います。高齢者の自殺者の多くは家族と同居しており、単身生活は全体の5%以下です。
 評論家の堀秀彦は、「老人が社会にもとめているが、けっして口に出せないものは『いたわり』であるという。老人とは闘い終わった人間であり、いたわり、哀れみ、尊敬といった複雑なものをまぜた目を痛切にもとめている」と語っている。
「受ける手がどんなに美しい形のものか」というゲーテのコトバは、助けを求める人と援助する側の人との授受が自然になされている状況を描写したものであろうが、この様な援助を求める手の差し出し方が出来るためには、相当、自我臭が脱落(とつらく)した人でなければ出来ないような気がします。だから『いたわり』を求めることはけっして口には出せないのでしょう。
 アベノミクスによる一億総活躍しなければならない今の社会が高齢者に求めているのは介護を必要としない「自立」です。しかし、「老い」というものがあたかも予防できるような、ひたすら健康増進に努めなければならないような、老年期というものをそんな狭いひたすら管理されねばならない一点に収斂させてしまっていいのだろうかと、私は思う。ただ言えることは、自立という価値を最優先させる社会環境の中では、誰にとっても老年期は生き難いと思うのだが。

ケアプランふくしあ 木藤


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